泣きながら走った。
目的なんてない。
ただこのままどこかに行ってしまいたかった。
現実を、見たくなかった。
行く当ても。居場所も。あたしにはもう無かった。
泣きながら走っているんだから周りには異様に映ったことだろう。
周りの視線が痛いほど突き刺さる。
それでもあたしの足は止まることを忘れたように走り続けた。
どれくらい走っただろう。
辺りはすでに闇の中だった。
でも、あたしの周りが明るいのはネオン街だから。
妖しい光りを爛々と輝かせるネオン街……通称・ラブホ街。
嫌なところまで来ちゃったな。
あの噂が脳裏を過ぎる。
噂じゃ…ないか。


