なのに。


涙がほろりと瞳からこぼれ落ちた。


一度関を切ったものは後から後から止まらず、下に向かって流れていく。









「ごっ…ごごごごめんって!!!泣かせるつもりなんてなかったんだよ!ただ…」


子供をあやすみたいに背中を優しく叩きながらそっと包み込んでくれる。




「…ただ…っ?」

「…亜莉沙が可愛すぎんだよ」

「えっ…?」


楓が何かぼそっとつぶやいたけど、あたしの嗚咽で聞き取れない。


「だぁあ!!他の男が亜莉沙見てんのに、気づかないで笑顔なんか振り撒くから!!!気付けよ鈍感!」

「…ふぇっ?」


楓が周りに居た野次馬達を一睨みすると、皆目を逸らしてどこかに行ってしまった。




「…ぷっ。楓って案外嫉妬深いんだね」

「……うるせぇ。…カッコわりぃ」

「ううん。大好きだよ」

「……チッ」

「…やっ」


楓が舌打ちしたかと思うと、優しくあたしの唇にキスを落とす。


ここ、公共の施設だってば!

皆見てるじゃんか!!











「逃げんぞ!」


周りの痛いほどの好奇の視線に真っ赤に茹で上がっていると、いきなり手を引いて走り出した。


「…わわっ!」


こけるってば〜!