「もう…どうしたの?」
やっと光梨が立ち止まったのは勇躍君が見えなくなったくらいの、公園の端。
鬱蒼とした木にもたれ掛かってあたしを上から見下ろして来る。
「あいつ…誰?」
「え?バイトの後輩」
「じゃなくて。名前」
「…勇躍君だけど」
何が聞きたいのか全く読めない。
「何で名前で呼んでんだよ」
「那智君とかもそうじゃん」
「俺は〝光梨〟なのに?お前の彼氏は俺なのに?何で飲み物買いに来たら別の男に軽々しく送られてんの?」
「ちょっ…!落ち着いてよ!」
「落ち着いてられるかよ!」
そう言いながら乱暴にあたしの腕を引っ張る。
「お前が居なくなりそうで…恐いんだよ……」
気付けばあたしは光梨の腕の中に居た。
「光梨……」
「光梨じゃない」
「ん?」
「楓」
「……」
何が言いたいんだろう。
光梨の意図が全く読めないんだけど。


