「一番線に●●行き特急がまいります。危険ですので、白線の内側にお立ち下さい。なお…」
駅のアナウンスが流れる中、あたしは母親と二人立っていた。
今日は出発の日。
見送りには誰も呼んでいない。
伝えてもいない。
学校では先生にインフルエンザだと伝えてもらった。
あたしが東京に着いたら辞めたことを伝えてもらうつもり。
「行くわよ」
「……ぅん」
ケータイを持つ手とは逆の手を母親に捕まれ、車内に入っていく。
真っさらなケータイの電話帳には母親しか入っていない。
ここあも、先輩も、…光梨も。
お馴染みのホームから足を離した瞬間、一瞬寂しさに襲われた。
さよならなんだなって。
この町とも。皆とも。


