「お風呂…空いたよ」
光梨に貸している空き部屋の扉をノックしてから入る。
「おぉ…サンキュ」
彼はこっちを向かないまま、向こうを向いて荷造りをしていた。
ホンキ…なんだ……
「妃崎?……ぇ?」
なかなか帰らないあたしを不審に思ったのか、振り返ったあと、あたしの顔を見て目を見開く。
「…何で、泣いてんの」
あはは…あたし…泣いてるんだ…
どうりで視界が潤んでるわけだ…
「……なぃで…」
「え?」
「行かないで……傍に居るって約束してくれたじゃない!!」
「………」
分かってた。
いつかこんな日が来ることも。
光梨は誰にでもしてて、
あたしは特別でも何でもないことも。
人は嘘をつく生き物で、
信じたら傷付くのは自分だってことも。
分かってたのに。
何で。
期待、したんだろう。


