涙でぼやけた世界に映る、涙でぐちゃぐちゃの母親。
そこに居るのは、いつも気高く、強く、美しい母親では…なかった。
化粧が落ちて、どろどろでパンダみたいになっている、醜い姿。
でも、誰かを愛す、強い瞳をしていた。
純粋に綺麗だと思った。
母親の瞳には、あたしが映り
あたしの瞳には、母親が映る。
こんな日は来ることは無いと思っていたのにね。
「亜莉沙……私はあなたを世界で一番愛してる」
こんな根拠の全く無い言葉を信じるあたしは負け組かもしれない。
それでも……疑うよりずっと気持ち良い。
「一緒に暮らそう?」
この問い掛けに
「…ぅん」
確かに頷いたのは
「あたしも大好きだよ」
……貴女が大好きだからです、お母さん。


