「謝るなら……」


謝るくらいなら……何で。




何で最初から“親”になってくれなかったの?




子供にとって親は何より必要な存在だったのに。


何で今さら謝るの?






「……私が精神病だったのは知ってるよね。だから…近付くと殴っちゃいそうで」




ぽつり、ぽつり、と呟く母親の言葉は言い訳と捉えるには十分過ぎるのに、




「シングルマザーじゃ普通に働いてても、亜莉沙を大学に通わせるには不自由じゃない。だから…こうするしかなかったの」




それでも、あたしの心にはすとんと落ちてきた。


そう言うと、母親はあたしを再び強く抱きしめた。


その体にはさっきみたいな弱々しさはなく、子供を守る、母親の腕をしていた。






そして、小さく笑う。


母親の笑顔なんて…いつぶりだろう。


「私ね、あんたがこんな目に遭ったのって…少しは私のせいかな、って思って…」


今まで黙っていた光梨がこちらに一歩踏み出した。

否定しようとしているのを感じて、片手で制す。




「だから……」