「……楓」
「龍、てめぇ――っ!!!」
光梨は全速力で走って来ると、あたしの上に馬乗りになっていた龍を思いっきり殴った。
一瞬にして数メートル先に龍がぶっ飛んだ。
光梨は倒れ込んでいる龍の上に誇ると、固く拳を作り、振り上げた。
何度も、歪んだ龍の顔に固く握った拳を叩き込む。
「やめてっ!」
「離せよ、妃崎っ!!」
見てられなくて腕を掴みに行くと、すごい勢いで振り払われた。
あたしを映す彼の瞳は今まで見たこともない、真っ赤な怒りに燃えていた。
「やめてってば!!」
「………」
「ねぇってば!!」
「………」
あたしがいくら言っても、光梨は殴ることをやめようとしない。
龍はもうすでにかなり息が乱れ、額には汗が玉となって浮かんでいる。
辺りに散らばる血に目眩がした。
「死んじゃうよ!!」
そう言って飛び出したのが間違いだと知るのは、ほんの数秒後のことだった。


