その瞬間。
龍の顔が少しだけ歪んだように見えた。
「復讐…、かな」
「…?」
あたし達の会話に他の奴らは混ざろうとせず、静かに見守っている。
「楓の大切なものを奪いたかったから」
「大切な…もの?」
「そ。家とかアンタとかね。
そうしたら…、…戻ってきてくれるかも、って」
龍は遠い方向を見つめながら、淋しそうに笑っていた。
今。こいつが、龍が、光梨が言っていたあの男なのだと気づく。
龍……あんた間違ってるよ。
そんな方法で戻ってきたって、もう友達って言わないよ。
「あんたが燃やしたんだ…家」
「そーだけど」
「でも…今回は失敗だね」
「は?」
光梨はあたしのことを何とも思ってないから。
大切なものなんかじゃないんだよ。
「あいつは…光梨は…、…あたしのこと…何とも思ってないから……」
自分で言ってて悲しくなってきた。
鼻の奥がツーンとしたけど、ばれないように下を向く。
「そんなこと、ねぇと思うけど?」
「そんな簡単に…言わないでよ……」
あいつは…誰にでも、キスしたり、優しく抱きしめたりしてるんだから。
あたしなんか特別なわけ、ない。
特別になれるわけ、ないんだから。


