「…浅倉?」
上から降ってきた声に顔を上げると、階段の途中で楓君がこっちを見ていた。
「かっ…楓君!!」
「どうした?…っと、おはようございます」
「もう昼だけど」
下に降りてきた楓君はお母さんに挨拶をしたあと、あたしに視線を戻した。
「亜莉沙が黒い車に乗せられて!」
「妃崎が!?」
「うん…、男の子乗ってたんだけど、誰か全然知らない人だった…」
何か考えたような顔をしたかと思うと、一瞬にしてはっとした表情に変わる。
――プルルルル…
いきなり鳴り出した電話に肩が震える。
「…もしもし」
電話に出たのは楓君。
心なしかその声は低く、震えていた。
『ああ…、楓?』
「龍?」
『久しぶりだな』
「お前、妃崎まで巻き込むなよ」
『この子、妃崎っていうの?
へー…、すっげえタイプ。よく感じてくれてるし?』
「てめっ…ふざけんな!!!」
楓君は電話の相手に向かって大声でキレると電話をぶち切った。


