「……っ…ずびっ…」
「…ここあ、うるさい」
「亜莉沙だって…鼻声じゃん…っ…」
だって…まさか…、ね。
中盤らへんになると、ホールの中はもう皆の啜り泣きでいっぱいになった。
「晃(アキ)間違ってるよー!」
「ここあ…迷惑だから」
座席を立って、男の子の晃に叫ぶここあ。
迷惑だってば。
「何で未来(ミク)じゃないのよ…」
そう、晃が迎えに来たのは、主人公の未来…ではなく、死んだ双子の姉、美貴(ミキ)だった。
外見はそっくりな二人。
だから、幼い晃は分からなかった。
彼女達が双子だということに。
でも、幼いながらも好きなのは、男勝りな未来ではない、女の子らしい美貴が好きだった。
でも、引っ越しの日…外に出て来た未来に『迎えに来る』と言ってしまう。
未来は泣いていた。
綺麗に。儚く。
例えるなら、スミレのような。
綺麗な透明な雫を零していた。


