警察からの事情聴取が終わり、家があった場所に帰ってきた頃には、もう2時を回っていた。
「……ねぇ」
「ん?」
さっきまで燃えていた真っ赤な炎は跡形も無く、真っ黒の灰が儚く風に舞っている。
少しふらつきながらも振り向いた先には
「あのさ…」
妃崎の姿があった。
「…うち、来る?」
絶句。
予想外で言葉が出なかった。
家が見つかるまでは、どっかのホテルに泊まろうかと思ってたところだったのに。
こんなの他の男に言ったら襲われんぞ、確実に。
いや、もしかしたらもう覚悟してるのかもしれない。
ましてや遊び人の俺のこと。
「ね?」
「あ…ぁー…」
「おいで、ウチほぼ誰も居ないし」
「……うん」
本当は嬉しかった。
俺は人の優しさに飢えていたんだと、この時知った。
こうして俺等の
不可思議な同居生活が
幕を開けた…―ー
〜楓side〜


