「…光梨」

「ん?」


テレビゲームをしていた手を止めてあたしの方を向く端正な顔。


「遊びに…、行ってくるね」

「……ん」


そう言いながらまた前を向いて、クリボーを潰し始めた。

感情が見えない無表情のまま。


あのクリボーはあたしかもしれない。

…あたしの恋心。


無関心に機械的に潰されていく想いの一つ。




あれ以来光梨はあたしにあまり干渉しなくなった。




『どこ行くの?』

『どこでも良いでしょ』

『誰と行くの?』

『誰でも良いでしょ』

『俺も連れてってー!』

『無理。じゃあね』




つい数週間前の会話が懐かしい。

もうあんな会話は出来なくなっちゃった。


きっと岡安先輩がなんか言ったんだろうなあ。


『思わせぶりなことするな』

…みたいなことを。


…あたしはそのままでも良かったのに。


光梨と良い友達で居られたら…それで……


…本当にそうだったんだろうか。


あたしは期待してないフリして心の奥底では狙ってたのかもしれない。


…――彼女の座。