次の日学校に行くと、まだ光梨の姿が見当たらなかった。


あいつ…、来ないつもりか?




しばらくすると、光梨が友達と笑いながら階段を上がってきた。


「光梨君…、…ちょっと来て」

「楓に何の用っすか」


…うーん。

君に用はないんだけどな。


光梨に話し掛けたはずなのに、隣の童顔男子が光梨の前に仁王立ちして俺を睨みつける。


年上に人気の…、那智…君?

クラスの女子が騒いでたような気がする。




「亜莉沙のことでちょっと…」

「楓に関係なくないですか!?」


いちいちうるさいなあ。

関係あるから来てんだろーが。


俺がだんだん苛々し始めた頃、光梨が初めて言葉を発した。


「那智…どけて」

「楓…」






黙って人気の少ない北階段まで向かう。


その間、光梨は俺の一歩後ろを俯きがちに歩いていた。