俺にはあの日からずっと君しか見えていない。
告られて、適当に付き合って、適当にキスして。
それでもずっと亜莉沙とその子を重ね合わせている自分が居た。
そんな時。
…君がたまたま俺の学校に入学したんだよ。
奇跡だと…運命だと、思った。
そして今じゃ学校中が知ってるあの噂もほぼ必然的に俺の耳にも入った。
〝妃崎亜莉沙はヤリまんで、援交少女〟
先生も知ってるようだが、成績優秀の妃崎が…と信憑性が薄いため、特にお咎めなし。
男子共も自分じゃ相手にしてもらえないだろうと声を掛けた奴は数少ない。
でも、俺は勇気を振り絞って声を掛けた。
『三万でどぉ?』
『いいですよ』
一つ返事だった。
迷うそぶりもなかった。
あの頃の君は弱かったよね。
葉月さんにいっぱい頼っていた。
でも、もうそんな君は居なかった。
…もう、どこにも。
一人で歩けるくらい強くなっていたんだ。
だけどね、君は気づいてないかもしれない。
俺はずっと見てたから分かるよ。
気高く、凛としているのに、目は泣いていたの知ってるよ。
いつだって助けを求めているような目はあの頃と一つも変わっちゃいない。
「先輩…離して…」
どうしてだろう。


