「何で…」
先輩があたしの肩に顔を埋めながら、呟く。
その声は、光梨の泣き出す時の細い声に似ていて、ふいに抱きしめたくなった。
背中に回しかけた手が空中で静止する。
何してるの、あたし。
あたしが好きなのは光梨なのに、その人と重ね合わせて他の人を抱きしめるなんて。
寂しさを他の人で埋めようとするなんて、
まるで母親みたいだ。
男に頼りっぱなしで、一人じゃ何も出来ない。
それでもって寂しさを紛らわすために抱かれて鳴いて。
だから…嫌いだ。
母親みたいな人間が大嫌いだ。
弱くて、人に頼ることしか出来ない
…ちっぽけな人間。
昔のあたしによく似ている。
「何で…あいつなの」
「え?」
「何で…光梨なの」
――ドクンッ…
胸の奥深くから何かに強く押し上げられた気分。
どうして…光梨なんだろう。
何で…あいつなんだろう。


