うそ…っ!
慌てて顔を覆おうとすると、先輩に腕を捕まれる。
「先輩…離して…」
「イヤ」
「何で…、…お願い…」
お願いだから離してよ…
こんな醜い自分、見られたくない…
何で泣いてるの、あたし。
こんな嫉妬深い自分…嫌い。
「ひゃ…っ」
いきなり腕を引かれたため、力に耐え切れずあたしの体は先輩の方に倒れた。
「何…先輩…離してよぉ…」
泣いてる自分なんて…、弱い自分なんて…、
見られたくない。
いつでも凜として、強い自分で居たいの。
同情されるような弱い人間になんかなりたくない。
あたしがいくら言っても、先輩の逞しい腕はしっかりとあたしの背中に回ったままで、離れる気配はない。
何なのよ…
怒りより、恥ずかしさより…あたしは何より、光梨を気にしていた。
もし光梨がこの光景を見ていたら…
助けてくれるだろうか…
見て見ぬフリするのだろうか…
頭の中が光梨でいっぱいになって、他に何も考えられなくて。
目を閉じれば、光梨のキスシーンが思い出されて。
心はジクジクと痛みだす始末。
他の人の腕の中で光梨のことしか考えないあたしは最低かもしれない。
それでも、あたしには光梨を消すことなんて出来なかったんだ。


