きゃーーーーー!!
耳をつんざくような歓声の中、ドアに片手をついてシラけた面をかましている男。
やけにハスキーな声であたしを呼んだこいつは、
「美し過ぎて今なら死ねる!」
「あの氷王が直々にお呼びだしよー!」
「蓮斗様ぁ〜!こっち向いてー!」
学園アイドルの名を誇る
〝氷王〟こと、岡安蓮斗先輩。
今日約束してなかったじゃん。
クラスまで来たら大騒ぎなんの分かってんでしょ。
めんどくさいことしやがって……
「何すか、先輩」
だるそうに出口に向かうと、先輩はにこっ、と胡散臭い笑顔をこぼす。
きゃぁあぁぁあぁああっ!!!
(あの氷王が笑ったよ!)
(わぁ、亜莉沙すごーい!)
「早くしてくれないと、鼓膜破れるんだけど」
「ごめん。今日は亜莉沙と一緒にデートしたい」
「あっそ」
きゃぁぁあぁああぁあぁああぁあっ!!!!!
(デートのお誘いだって!)
(やっぱりあの二人出来てたんだよー!)
(美男美女だねー!!)
何か変な誤解生んでるんだけど。
「早く行くよ」
鞄と先輩の腕を引っつかんで教室を足早に後にした。
また悲鳴らしき歓声が響いていたけど、無視無視。
いちいち人気だねぇ、あんたは。


