「………何これ…」
長い時間をかけてやっと絞り出たのはこの言葉だけ。
“唖然”
これが今の俺の状況に1番近い表現だと思う。
ショックでも寂しいでも悔しいでも、どこか違う気がする。
俺は今、人生最大くらいに唖然としている。
……自分の家を見て。
家は丸焦げで。
やじ馬だらけで。
そこには近所のオバサンも妃崎も居て、皆がみんな唖然としていた。
汗水垂らしながら必死に火を消してくれてる消防士さんには悪いけど、もう手遅れだと思うよ?
俺の存在に気付いた一人のオバサンが、こっちを振り返って興奮気味に話し出す。
「なんか若いガラ悪そうな二人組が、あんたん家に火付けしててね!
慌てて消防車呼んだんだけど遅くて……」
ごめんね…と謝ってくれるオバサンに、乾いた笑いを返した。
「良いっスよ、…別に」


