午後の授業に光梨が顔を出すことはなかった。
正直言って寂しい。
でも、その感情は見ないふりをした。
…伝えても無駄、だから。
あたしが汚れてなかったら、もう少し綺麗だったら、光梨に言えてたのかな。
…もう遅すぎるけど。
告白するには、あたしは汚れすぎた。
真っ黒になってしまった。
もう一度、もう一度…
あの中二の夏に戻れたら、あたしはきっと変われるのに。
お兄ちゃんが、
死んだ…夏。
殺された…夏。
その日も暑い暑い日だった。
夜になっても、一向に涼しくなる気配は無く、蝉がむやみやたらと鳴いている。
――綺麗な満月の夜。
いつものようにあたしは義父に、小汚い親父に、犯されていた。
『何してんだよ!』
手足を縛られたあたしを見て、絶句したお兄ちゃんはそのあと親父をキッと睨みつけた。
その瞳は、深い憎悪と怒りが入り混じっていた。


