「さっきまで別の女と居たくせに!あの人が居なくなったらあたし!?
タラシ!遊び人!!
近づかないでよ!!!」
止まらない。
言う度に後悔の波が押し寄せるのに、唇は壊れたように彼を罵倒する言の葉を紡ぎだす。
光梨は何も悪くないのに。
あたし以外にキスしないで。
あたし以外を抱きしめないで。
あたし以外に微笑まないで。
こんな子供じみた独占的なんておかしいと思う。
ましてやあたしは光梨の何でも無い。
…―ただの同居人。
こんなこと思うのはおこがましいって分かってる。
だけど、好きだから。
大好きだから、あたしだけに触れてほしい。
その時、あたしがヒステリックに叫ぶのとは対照的に光梨はにこり、と笑った。
「つまり…嫉妬だ」
「は!?」
図星過ぎて顔に熱が集まる。
光梨は、火照った頬に右手をそっと当てて、余った左手で頭を優しく撫でた。
「いい子いい子」
「子供扱いしないでよ!」
あったかい光梨の温もりを振り払う。
それでも光梨は怒ることなく、可愛く微笑んだ。
「相変わらず可愛くないね」
「…あんたに関係ない」
スッとあたしの傍から離れると片手をあげた。
「じゃあな」
「…うん」
もう行っちゃうの?
思っても口には出せない言葉が喉に詰まったまま空気に馴染めない。
その表情を見てか、光梨がまた戻ってきて、あたしの耳に妖艶な唇を寄せる。
「……やっぱり、可愛い」
無意識に頭に手を置いていた。
彼が触れた部分だけじわじわと熱を帯びていて。
驚くほどの熱さに頭がくらくらした。


