「んー…どれにしよ?」
りんごジュースかミルクティーか…、それともココアにしようかな。
でも、やっぱり炭酸系も捨てられないよなぁ。
「うん、あえての野菜ジュースにしよ」
――ガコンッ
大きな音を立てて落ちてきた野菜ジュースを手に取る。
すると、
「あの…」
「ん?」
後ろから声をかけられた。
「誰?」
振り返ると、知らない男の子がオドオドしながら立っている。
「あ…すみません。
D組の暁って言います。ちょっと話あるんで渡り廊下まで…」
「アカツキ、くん?
あー…、いいけど」
誰?名前を聞いても未だに頭に思い浮かばない。
まぁ、あたしA組だし…遠いっちゃ遠いんだけど。
「げ…」
「え?」
あたしの視線の先には渡り廊下でキスする男女。
しかも、男の方はあたしのよーく知ってる人だった。
タイミング悪いなー…
「ぁ…あのっ」
「はい?」
「妃崎さん…ずっと好きでした!」
「誰が?」
「え?」
「ん?」
そんな誰かを好きなこと、あたしに言われても困るんだけど。
「妃崎さんが」
「あたしが?」
「好き…です」
うわー、顔真っ赤。
「…?…、……あたし!?」
「うん」
「あー…ごめんなさい。好きな人居るんだ」
「そっか」
そこで濃厚ちゅーしてる奴ね。
暁君はあたしに一礼すると走って帰って行った。
悪いことしたかなあ…
暁君の背中を見送ってから、戻ろうと身を翻した。


