「それさあ…」


前の席のイスを引きずって近づいてくる。


「楓君に…、もらった?」

「え…」


何で…知ってるの?


「やっぱり?分かりやすいんだよ、あんた」


ここあの目が見たことないくらいに冷たい。

こんなのここあじゃない…


いつもみたいに笑ってよ。




「いーなー!あたしもそれ欲ーしーい!」

「ダ…」


何『ダメ』なんか言いかけてんの。

別に良いじゃん。あいつはどーせ誰にでもしてるんだから。







「……いいよ、あげる」




「ぷっ」

「え?」


その瞬間。


さっきまでの冷たい目のここあは居なくて、いつもの可愛い笑顔の彼女に変わった。




「亜莉沙ー……ダメだよ?」

「何が?」

「大事にしなきゃ、その気持ち」


ここあの言ってる意味が分からない。




「ほら」


そう言いながらあたしの手からクマを取り上げると、あっという間に鞄に付けた。




「欲しかったんじゃ…ないの?」

「ふふっ…、ライバルに負けてんなよ?」


どういうこと?