だんだん、唇に触れたその感覚がなくなっていく。 ブワァァァ……。 風が吹き、唇に触れた全部の感覚がなくなった。 「絢……じゃあな」 彼はもういない。 最後に、その言葉だけが私の耳に入ってきた。 「夏くん……ちゃんと成仏したんだ……」 そう言葉にしてみると、急に寂しさが込み上げてきた。 さっきも泣いたのにまだ涙は枯れていないようで、私の目からはボタボタと涙の粒が落ちていく。 「……っ、うぅ……」