私は夏くんの目を見つめる。
その目に、最後に私をうつしていてほしかった。
「夏くん、私ね、夏くんと会えてよかったよ。夏くんといて楽しかったよ。一緒にいてくれてありがとう……」
涙が一つ、また一つと夏くんの肩を濡らしていく。
「泣くなよ。最後くらい笑ってくれ……」
夏くんは私の頭を優しく撫でる。
頭には、風が吹いたような感覚しかなかった。
「絢……俺を好きでいてくれてありがとう……」
唇にそっと柔らかいものが触れた。
この時だけ、唇には確かに何かが触れているような感覚があった。
夏くんからの、最後のキス--。

