「夏くん、ねぇ……」 夏くんは私へと目を向ける。 ……分かっていた。 きっと、そうなんだろうと。 『あっち』が何処(ドコ)の事なのか。 もう、別れの時が近いという事。 二度と会う事はないだろう事も。 全部、分かっていた。 だけど、聞かずには いられなかった。 分かっていたけど、「違うよ」って否定してほしくて。 「あっち、って? ねえ、何処なの? また、会えるよね? ……絶対、会えるんだよね……?」 彼の服の袖に しがみつきながら問いつめた。