満月の夜の君に



「夏くん、ねぇ……」





夏くんは私へと目を向ける。





……分かっていた。



きっと、そうなんだろうと。








『あっち』が何処(ドコ)の事なのか。



もう、別れの時が近いという事。



二度と会う事はないだろう事も。





全部、分かっていた。







だけど、聞かずには いられなかった。




分かっていたけど、「違うよ」って否定してほしくて。






「あっち、って? ねえ、何処なの? また、会えるよね? ……絶対、会えるんだよね……?」





彼の服の袖に しがみつきながら問いつめた。