「んなこたぁ分かってます!!」
私はボビングをし終え、無事赤い板に着地した直後に叫んだ。
そして素早く身を翻し、腕を構える。
「ほらほら次こそとどきますよ?無駄口叩いてないでさっさと構えてくださーい」
「はいはい」
梶原コーチは優しく微笑み、両手を腰に添える。
私は息を大きく吸い込み、
前を見据えて激しく気泡をたてながら水中に潜り、
太ももからふくらはぎ、そして壁にぺたりとくっつけた足の裏まで力を入れて、
おもいきり壁を蹴り飛ばした。
……つもりだった。
しかしながらというべきか、壁を蹴り飛ばした足はつるりと滑り、
煽る期待とは裏腹に、私の体はあまり進まなかった。

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