「とどかなかったときのことなんて考えなくていいから」
「万が一のときのためです!」
「んー」
実は私は確信していた。
私が溺れたらまた、前みたいにコーチが助けてくれると。
「…ボビングって知ってる?」
でも、ただ待っていただけだった。
「水底を蹴って顔を水上と水中に出し入れしながらジャンプして進む、
水深が自分の身長より高くても呼吸をしていられる手段なんだけど」
確信というより、期待していただけだ。
「それで赤い板まで戻って」
「えぇええぇえええぇぇー!!」
助けてくれないの!?
ジャンプしながら戻るの!?
コーチはずっとそこに突っ立ってんのォ!?

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