コーチは早速、「腕は頭の上でひとつに組んで…」と教えだす。


「お手本は?」


「え、手本いる?」


明らかにお手本なんて見せるつもりのなかったであろうコーチにコクリと大きく頷いてみせると、

コーチは少し考える仕草をした後に自分のゴーグルに手をかけた。


「じゃあやるから、潜って見てて」


そう言われて、さっき戻ってきたばかりの相棒を素早く装着。


私がチャポンと潜ったのを合図に、梶原コーチは動き出した。


ぐん!っと潜ったかと思いきや、
ぐん!っと壁を力強く蹴り、
ぐんぐんあっという間に進んでいくコーチ。


水がコーチについていく流れが、なんとなく見えた。