「泳、げなくて…」


変な考え事をしているうちに、素直に答えてしまっていた。


「単に溺れただけ?」


私がこくりと頷いたのを確認して、コーチは息を漏らす。


「良かった。無駄に心配した。最初なんだから、泳げないのは当たり前だよ。これから練習していくだけじゃん。」


「違いますっ!」


思わず食いかかってしまう。


「クロールが泳げないとかじゃなくて、あっいやクロールも泳げないんだけど、
それ以前の基礎的なこともできてないというか…。
あ、例えば水の中で浮くとか…も、できなくて。」


私のぐちゃぐちゃな恥ずかしい告白を、コーチは黙って聞いてくれていた。