SWIMMING*SCHOOL

車に近づくと、黒い塗装がきらきらと夜の光を反射していた。


「よろしくお願いいたします」


「どうぞ」


すこし緊張しながらも車高の高い車に乗り込むと、まるでお風呂あがりのような清潔感のあるせっけんの香りがふわりと漂う。


「家どこらへん?どっち方向?」


「菅佐原町のほうなんですけど」


「はーい」


軽く返事をして、コーチはゆっくりと車をだす。


初めて見た車を運転する姿に、何度も目をとられてしまい、

「次どっち?」なんて言われた時に目があってから道案内の使命を思い出し、はっと気づく。


「そこの“止まれ”を左です」


「左ね」


左右を確認しながらハンドルを左にまわすだけで、なんでこんなに画になるんだろう。