和宮が戻っていくのを確認すると、熙宮は口を開いた。
「どうだ?なかなか可愛らしいであろう?」
「・・・さて、俺は幼子に固執する性質ではないので、よく分からないと答えておこう」
「本気で言っているのか?和宮は父上のご寵愛をその身に受けた見目麗しき観行院様の残して行った、いわば朝廷の華だぞ?」
観行院(かんこういん)とは、和宮の実の母親であり、仁孝天皇の最も愛した側室といわれている。
「たとえ、お前好みでなくてもな」
「・・・どういう意味だ?」
熙宮は滑稽な物を見るような目で先を見据えた。
「お前の好みは夕鈴のように日向で寝転ぶ猫のような無防備さ、向日葵の様な笑顔なのは分かっている」
「・・・」
「だが、和宮はおそらく百合よりも凛とし、紫陽花より儚い美女になるだろうな」
歓宮は少し考え、答えた。
「・・俺にはまだわからないな」
「あまり夕鈴に手出しをするなよ、和宮に嫌われるぞ」
「俺はあの方に嫌われても、婚約してしまえば問題はないのだが」
「・・・今は、の話だがな」

