仔猫は気付く。
自らの主の匂いに。
そして見つける。
その姿を。
一時的に自らを撫でていた者になど目もくれず、主へと擦り寄る。
「にゃぅ?」
端から聞けば愛らしい声だった。
しかし、和宮のよく知った二人───歓宮と夕鈴が身動き一つ出来なくなるには十分だった。
抱き上げてくれないの?とでも言うように、主の足元にすりすりと身体をよせている白夜。
「和宮、様・・・ッ!!」
夕鈴の悲鳴じみた声は、和宮の心にひどくこだました。
「いいこね、白夜」
和宮は白夜を抱き上げる。
夕鈴は気付いた。
和宮の様子がおかしいという事に。
そして理解する。
和宮の心が壊れたのだという事を。
しかも、そうさせたのは自らであるという紛れもない事実。
「あ、あぁ・・・私、わたし、は・・・っ」
ただ震える夕鈴と唇を噛み締める歓宮を残して和宮は去った。

