「白・・・」
───話し声。
誰もいないはずだが、話し声がする。
そして和宮は気付く。
よく知った声だ、という事に。
からり、とほんの小さな音を立てて開けられた襖。
その向こう側。
よく知った二人。
白夜を撫でながら話している。
此方には気付いていないようだった。
不意に、自分もそこへ行こうとした。
しかし、僅かに足を動かして───やめた。
そして、思う。
(アナタも、嘘つきなのね・・・?)
自分に向けられた言葉には嘘しかないのだと、
五才の少女は気付く。
枯葉のようにひらひらと、何かが脆く落ちていく。
いたい、痛い
心が痛い
つめたい、冷たい
頬を何かが伝う
苦しくて、寂しくて、孤独で
呼吸にも疲れてしまったような
ひどく渇いた感情

