「風邪を引いた!?」
「えぇ、そのようです・・・」
歓宮との婚約から3ヶ月───
婚約しただけであり生活に特に変化の無かった和宮は夏風邪を引いた。
「夏風邪は・・・」
「馬鹿が引く、というのは言わないで下さいませ」
「まぁ、元は君の風が移っただけのようだしね」
「申し訳ありません・・・!!」
そう───
和宮が風邪を引いたのは和宮が馬鹿だったからではない。
和宮よりは馬鹿であろう夕鈴が風邪を引いたため、見舞った和宮が風邪を移されてしまったのだ。
「まぁ僕からは何も言えないかな。しばらく和宮が安静にするいい機会にはなると思うけど」
「承知しました。何か御伝言などはございますか?」
「あー・・・早く治してねって事くらい」
「では・・・」
夕鈴は一礼をし、部屋を辞していった。
「アイツも、見舞うのかな・・・」
一人になった部屋の中。
熙宮は一人考える。
(見舞うのは、名目上だけ、か・・・)
頭に浮かんだのは、妹の婚約者。
不安定な関係が気付かれつつある、という事に気付いてはいないのだろう。
あの二人は───