歓宮は夕鈴に溺れたかった。
夕鈴も同じだった。
しかし夕鈴は主を持ち、
主と歓宮を思う気持ちが心を傷めている。
5歳の、小さな夕鈴の主。
母親は生誕まもなく出家し、
父親は顔すら見たことがない。
兄は帝であるため気軽に話すことも出来ず、
姉は人々のせいで部屋に籠もってしまう。
そんな、
宮中で、いつもひとりぼっちだった夕鈴の主。
これからもひとりぼっちばかりなのだろう。
女中である夕鈴も、家族の様に扱ってくれるのに、
その優しさを一体誰が裏切れるというのだろうか。
歓宮は夕鈴に伸ばしかけた腕を引っ込める。
「申し訳ない・・・」
「歓宮様・・・?」
「もしも───
僕のことが嫌いでなければ、
また、話くらいはしてください」
そして、歓宮は去っていった。
夕鈴に淡い感情を感じさせたという事に気付かずに───