君にもう一度逢いたかった。


「と、とにかくですわ!あなたは昨今の日本の情勢について、どう思っているんですの?」

「日本は、他国との関わりを、持つべきだと思いますが・・・」

「それ、が!甘いと・・・」

「で、すが・・・」

ほぼ、同時に。

和宮の姉と兄は床に手をついた。

口論が始まり約半刻。

大声で言い合っていた姉弟は息切れをしている。

戦のような、弾丸連射的口論をしていたのでは無理もない、と和宮は思った。

(この姉弟、果たしてどちらが強いのでしょう?)

部屋の外の夕鈴は首をかしげた。

それは宮中の中でも1,2を争う話題であったため、二人の口論がすさまじいのは明らかな事なのだが───

「お二人とも、落ち着かれましたか?」

「えぇ、大丈夫よ和宮・・・」

「まだまだ、いけると思ったんですけどね・・・」

似たもの姉弟は悔しそうに互いをにらみ合っている。

和宮はそんな二人を見てついつい吹き出してしまった。

「お二人とも、そっくりです・・・」

「まぁ和宮、今上帝であるのに子猫に白夜と名付けたこの弟と私が似ているというのですか!?」

「同感ですね、こんな人見知りの激しい失礼な姉と一緒にされたくないな」

「・・・熙宮、あなたとは今度じっくりと話し合ってみる必要がありそうですわね」

「おや・・・奇遇ですね。僕もそう思っています」

「覚悟しなさい・・・!!」

「お二人とも!!」

再び口論を始めそうになったので、流石に和宮がとがめた。

「いい加減にしてください!!そのように口論ばかりされていては、亡きお父上のため息が聞こえてきそうですわ!!」

和宮でも、我慢の限界だった。

「姉様!!
 猫に名をつけてほしいと頼んだのは私です!!
 そしてこれからの日本の方針は今上帝がお決めになること!!
 その事についてとやかく言う権利は私たちにはございません!!
 いいですわね!?」

「・・・はぁーい」

「今上帝!・・・いえ、兄様!!
 姉様を挑発するような言葉は慎んでください!!
 実の姉なのですよ!?
 確かに兄様は帝ですが、その帝位よりも姉弟間の絆の方が大切なものだと思わないのですか!!
 家族を大切にするという事に重きを置いてください!!」

「・・・分かったよ」

(───一番強いのは、和宮様ね・・・)

部屋の外の夕鈴は、一人静かに納得した。