「我が姉は私には厳しいようですね」
「帝!いえ・・・熙宮!!ちょっとこちらへ来なさい!!」
「言われなくても、そのつもりで参上したのですけどね」
「良いから来なさい!!」
「分かりましたよ」
いきなりの兄の登場で和宮はただただ驚くばかり。
「いい事!?私は、和宮の誕生日祝いとして、この白い子猫を贈ったのですよ!?」
「それくらい知っていますよ」
「それなのに貴方が和宮の子猫に白夜、という名前をつけてしまっては意味がないでしょうが!!」
「和宮がお願いしてきたからです」
「そのようなこと・・・お願いされたとしても、言語道断!!」
「あ、あの、お姉様・・・」
「第一、白夜という名が、どのような意味を持っているか理解しているのですか!?」
「してるからつけたんでしょう」
「落ち着いてくださいませんか・・・?」
二人とも、和宮には気付いていない。
「理解しているのならばなおさら許せません!!」
「何故、でしょうか?」
「聞いてくださーい・・・」
「大体白夜というのは北欧で見られる日の沈まぬ夜のことですよ!?」
「それが何か?」
「その白夜という名をわざわざ自らの妹の子猫の名にするとは!!」
「聞いてー・・・」
「いけませぬか?」
「いけないも何も、あなたは昨今の日本の状態が理解できているのですか!!」
「きい・・・」
「僕は今上帝ですよ?そのようなこと当たり前ではありませんか」
「ならばなおさらです!!」
「ですが僕は───」
姉弟の言い合いに和宮は参加させてもらえず、ただただ和宮の部屋から口論の声が聞こえるのみ。
そしてその口論の声は宮中内にかなり響いていた。
また、和宮の部屋の前で微笑む女中が一人。
(和宮様、賑やかでよろしゅうございますわね)
この口論に和宮は参加していないため、賑やかかどうかは夕鈴という天然の女中が判断しただけなのだが───
口論は、とても長く続けられた。

