言いたいことはいっぱいある。

だけど。
それを言ってしまうと…目の前にいる“架衣”を否定してしまう気がして。

どうしても、記憶を喪う前の架衣を懐かしんでしまう気がして。


私は、さっきの架衣と同じように 言っていいものかと戸惑う。

そして、そんな私の気持ちを 架衣は敏感にも感じとったのか。


「いいよ…それが俺じゃなくてもいい。
俺じゃない“俺”の話でいいんだ。
ただ…知りたいんだよ」

“君が好きだった“俺”のことを”


少しだけ淋しそうに笑う。
でも、言葉を撤回はしなくて。


私は、それを確認してから 静かに口を開いた。