『明日、式の後に別館の裏に来てくれる?』

先輩と学校で最後に話しができるというのに断るはずもなく、はいと二つ返事で答えた。
何通かメールをやり取りし最後のメールを送り終えて携帯をパチンと閉じる。

明日の卒業式に思いを馳せ、腰掛けていたベッドに仰向けに倒れこんでそのまま眠りにゆるゆると落ちていった。







先輩と出会ったのは一年の秋も終わりに近づいた頃。
朝の誰もいない静かな教室が好きで、たまに早く学校へ行くことがあった私はその日も授業開始時刻から一時間も早く教室の扉をくぐった。
目的を持って早くに来ている訳ではないので、普段はなにをする訳でもなく

席に座ったり、

携帯をいじったり、

寝たり、

本を読んだり、

音楽を聴いたり。


けどその日は席に座ることはせずに、携帯とipodを少しのびたカーディガンのポケットに詰めて財布を手に廊下に出る。
別にどこにも用はなかったけどなんとなくふらふら彷徨ってみたかった。




ちょっとした冒険心と探求心。


足は自然と、あまり利用することがない別館へと向かって行く。