後輩男子に惚れちゃいました。

灯先輩は大島君がいなくなった途端、あの試合中のバックドライブの時のように顔を覆って俯いた。

「……あーもう何なの。最後の最後で格好良すぎるんだよー……」


そんな灯先輩の姿を見て、わたしと琉依は遂に吹き出した。

「え、え?何?」

そして、わたし達を見て、灯先輩はとても慌てて、焦っていた。

「いや、灯先輩、あなたも十分大胆なこと言ってました」

「え?嘘、言ってないよ」

「だって考えても見てください。

大島君に『灯先輩が可愛すぎて勉強なんて忘れてました』って言われたようなものですよ?」

琉依の的確な例えを聞いて、灯先輩は暫し固まった。そう、それはまるで、さっきの大島君のように。



「え、ちょ、ちょっと待って……。うわ、わたし……恥ずかしい」

そう言うと、灯先輩はさっきのようにまた顔を覆って俯いた。

そしてまた、わたしと琉依は顔を見合わせて笑ってしまった。








――――その日、大島君は『番狂わせ』を起こし続けた。

1回戦ですら危ういと思われていた彼は、結局、スマッシュやドライブを決め続け、なんとベスト4に入った。


それは、もちろん、北信越…といっても新人戦は北信越練習合宿だけれど、その合宿への参加権を得ることができる位置。


高原中史上初の快挙だった。


そして、大島君の表彰式が終わって、高原中は解散した。


ただ、親の迎えがまだ来ないわたしは、寒々しい会場の外でお迎えを待っているのです。