後輩男子に惚れちゃいました。


何だかそれが面白くて小さく笑みを零すと、大島君も大島君もつられたように笑っていた。


「・・・別に、緊張してないわけじゃねぇよ」

「え・・・?」


突然落とされた真面目な声に、わたしは思わず彼を見上げた。

大島君は少しだけ顔を上げて、空を仰いでいた。



「負けたくないし、ココで終わりたくないし、一生懸命練習してきたからこそ、結果が出せないのが怖い。


・・・だけど、それよりも、勝ちたくて」


「・・・え?」

大島君は卓球部の皆の方へと視線を移した。



「不安もあるし、怖いけど、そんなのどうでも良くなるくらい、ただ勝ちたいんだよ。

・・・今まで練習してきた、このメンバーで」


そう言い切ると、小さく穏やかな笑みを零した。


すっと胸の中の塊が溶けていくような感覚に襲われる。



そっか。そうなのか。

『負けたくない』じゃなくて『勝ちたい』。


すとんと、その言葉が胸に落ちた。




「・・・うん、勝ちたい」



わたしがそう呟くと、大島君は目を細めた。





「それでは、今から開場します!地域ごと、朝の練習台をしっかり確認しておいてください」




ゆったりとしていた空気にぴんと緊張が走る。


大島君の表情もさっきより凛と張り詰めていた。


「・・・行くか」

大島君の言葉に頷きながら、ぎゅっと手を握り締めた。