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早く早くと急かすほど、時の流れは遅くなる。
止まれ止まれと願うほど、どんどん時は進んでいく。
でも、そんなのは只の主観的な感じ方で。
本当は、何も変わってはいないんだ。
ウィンドブレーカーに手袋という完全防備した状態で、私たちは県大会の会場の入り口付近に集まっていた。
来てほしくて、来ないでほしかったような県大会がいよいよ始まろうとしている。
どうでもいいけれど、何で体育館に入らないかというと、まだ開場していないからという何とも単純な理由。
県大会も数ある大会のひとつに過ぎないけれど、さすが県というだけあって、皆の表情はいつもよりも心なしか緊張しているように見える。
いや、もちろん、私もです。
心臓がバクバクして、そのうち壊れるんじゃないかと思っています。
緊張を少しでも和らげようと、ふーっと深呼吸したときだった。
「わ!」
突然後ろから、大声が落とされた。
息が、止まるかと思った。
驚きを通り越して、もう、何が何だか分からなくなる。
声を出そうにも、喉が動きかたを忘れたみたいに何も機能しなかった。
「うわ、ごめん、そんなに驚くと思わなかった」
驚かした張本人は、逆に驚かされたような表情でそういった。
その声を聞いたら、やっと驚きも解けて、わたしの身体も動きを取り戻した。
「・・・大島君。おかげさまで緊張忘れましたありがとうございましたっていうか君は緊張してないんですか何なんですかメンタル化け物ですか」
「あの、まじで、すみませんでした。だから、そのどうでもよさそうな目でノンブレスマシンガントークやめて」
必死そうな声で大島君は懇願していた。
その瞳は、子供みたいに無邪気に笑っていたけれど。

