「・・・っ」
ダメだ、泣くな。
グッと唇を噛み締める。
ドクドクと嫌な音を立てている心臓から、目を背けて、無理矢理に足を動かした。
――
「あ、卯月、お帰り」
教室に入ると、琉依が笑顔でそう言ってくれた。
何だか、それが、とてもとても、温かかった。
「・・・大丈夫?なんか、元気ない?」
優しい問いかけに、私は小さく首を振った。
「ううん、別に」
少しだけ、ぎこちない笑みを創りながら。
そうやって、私はまた、
――私を、誤魔化し続けるんだ。
窓の外の青い空を見つめた。
「すぐだね、県大会」
突然、そんな言葉が零れた。
琉依は、私のそんな呟きに少し驚きながらも頷いた。
「・・・勝ちたいね」
誰に言うまでもなく、私はそう呟いて右手に視線を落とした。
「男子も、女子も・・・大島くんも、皆、勝てたらいいね」
独り言のような私の呟きに、琉依は戸惑いながらも「そうだね」と言って笑った。
勝ちたいよ。
そうすれば、もう一度。
―――創らずに、もう一度、笑えるような気がした。

