後輩男子に惚れちゃいました。


真っ直ぐな、その影で一瞬視界が暗くなった。


あとワンテンポずれていたらぶつかりそうな距離で、その影の主は私より早く謝罪の言葉を吐いた。


「っ、ゴメン」


頭の中に直接入ってくるような、聞きなれた声。


「赤、堀」

「って、何だ、宮間か」

「・・・どうも、すみませんね。宮間で」


「てか、何でこんなとこにいるの」

「何、さらっと私の嫌味をスルーしようとしてくれてんの」



少し前まで、当たり前だった言い争い。

どうして、だろう。

なんか、前よりももっと素直になれない子になっているような気がした。



その時、綺麗な声が入り込んできた。


「宮間先輩は、私の忘れ物を届けてくれたの」


「夏音の?忘れ物?」


赤堀は不思議そうに小さく首を傾げた。



視界がぐらりと歪んだような感覚。



「うん、何か、理科室に置き忘れてたみたいで・・・」

苦笑いしている麻田さん。


そんな姿でさえ、綺麗だなんて、神様は不公平だ。



「・・・ごめん、私、教室戻るね」


小さく言葉を押し出して、歩き出した。


赤堀と麻田さんの声が聞こえたような気もしたけれど、とても、振り返ることなんて出来なかった。




『夏音』


ねぇ、赤堀。知らなかったよ。


君があの子を名前で呼ぶようになっていたことも。

何も。


知らなかった。