「あの・・・」
控えめに押し出された声。
けれど、凛として真っ直ぐな声。
俯いていた視線を上げると、不思議そうな表情でそこに彼女は立っていた。
何か、好きだな。こういう子。
突然、そう思った。
あのノートを差し出しながら、口を開いた。
「あ、突然ゴメンね。
えっと、2年の宮間です。
あの、これ、理科室に置いてあったから・・・」
麻田さんは、少しだけ目を見開いた。
そして、ノートを受け取ってから、ぺこりとお辞儀をした。
何だか、そんな些細な所作が綺麗だな、と思った。
「ありがとうございます!探してたんです。
わざわざ届けて頂いてしまって、すみません」
そう、こういう子。
着飾るでもなく、かといって何もしないわけでもなく。
真っ直ぐで、自分があって、礼儀正しくて。
――私とは、全然違う。
何だろう、この感覚。
簡単にいうなら、凄く凄く悲しいんだ。
でも、それだけじゃなくて。
言い表せない、感情。
「ごめんね。じゃあ、私はこれで」
そう言って、振り返ろうとしたとき。
視界に影が現れた。

