体温が計り終わったことを知らせるピピピという無機質な音と同時に、来客を知らせるチャイムが鳴った。
「はーい、今行きます」
お母さんは、パタパタとスリッパの音を響かせながら、階段を下りていった。
「37,2℃・・・」
平熱が36℃前後の私にすると、ちょっと高めだけど、まぁ、いいか。
体温計をケースにしまった瞬間、また、部屋のドアが開いた。
「卯月、琉依ちゃんが来てくれたわよ」
「え、琉依が?」
「上がってもらっても大丈夫?」
お母さんの問いにすぐに頷く。
「琉依がいいなら、いいよ」
私が頷いたのを確認して、お母さんはまた下へ下りていった。
少しして、琉依とお母さんが部屋に入ってきた。
「じゃあ、私、下にいるから。何かあったら言ってね」
お母さんはそれだけ言うと、そのまま部屋から出て行った。
「・・・こんにちは」
何を言ったらいいのか分からなくて、そう言うと、珍しく琉依の口調は強くなった。
「こんにちは、じゃないでしょ!
何いきなり倒れてんの!」
「・・・じゃあ、次は『倒れます』って言ってから倒れる」
「そういう意味じゃないよ!
ていうか、それ、出来たら逆に凄い」
「だよね」
そう言い返すと、琉依はふーっと息を吐いた。
そして、さっきの口調とは打って変わって、柔らかく微笑んだ。
「思ったより、元気そうで良かった」

