ちょっとだけ、恥ずかしかったけれど、必死に言葉をつむいだ。



さっきも、言った。

でも、何かやっぱり、もう一度、俺自身の言葉で言いたかった。



何度言っても足りないくらいの、この気持ちを。





「・・・ありがとう、ございました」


俺が言うと、先輩はちょっとだけ首を傾げた。


そんな仕草も、ちょっとだけ可愛いと思ってしまった自分がいた。


「・・・どうしたの、いきなり」




「灯、先輩がいてくれなかったら、きっと俺は・・・今も前に進めてなかった。


でも、先輩がいてくれたから、今、こうやって前に進みたいって思ってる。




だから・・・、ありがとうございます」



先輩の瞳を見つめる。



「先輩がいてくれて、良かった、です」



先輩はすっと目を伏せた。

そして、またゆっくりと目を開ける。



それだけの動作なのに、洗練されたその動作は、とても綺麗だった。



「ありがと、っていうのは、私のほうだよ。


大島君が・・・ナオが、いてくれて良かった」




ドキン、とまた心臓が跳ねる。


先輩の声でナオって呼ばれるだけで、


笑うだけで、


とにかく、心臓が壊れそうで。








「そろそろ、戻ろうか」


何だか、ちょっと照れたように笑いながら、灯先輩はそう言った。


2人でいる、この時間が終わってしまうのはちょっとだけ、惜しい気もしたけれど。




大丈夫。


だって、これから、もっとこういう時間が増えるから。


そう思った理由なんて無いんだけど。




それでも。



――そんな気が、したんだ。