真っ直ぐな響きと、凛とした声に、俺はただ、何も言えなくなった。


先輩が『ナオ』って呼んだ瞬間、一瞬、世界が止まった気がして。



よく分かんないけど、その呼び方は物凄くしっくり来る。



まるで、それが当たり前みたいに。





先輩は、相変わらず無邪気に笑う。


「ね、どう!?」

その声で、ハッと我に返った。


「っ、あ・・・はい。

・・・俺はいいですよ」


俺の答えに満足したのか、先輩はまたにっこり笑うと、鮮やかに言い切った。



「ナオ。

じゃあ、私のことも『灯』って呼んでね」



うわ、もう、何で。

何か、鼓動がどんどん速くなる。


調子が狂う?

いや、本当、余裕がなくなる。




その無邪気な笑顔にも。

頑張りすぎる性格にも。


ちょっとだけ強がるところにも。



惹かれてる気がして仕方ないんだ。





「灯、先輩」


どうしてだろう。

そう言うだけで、何かそれが特別に感じる。



名前を呼ぶ。



それだけなのに、緊張が走る。




でも、先輩は。



「うん!」



俺にそう呼ばれたのが嬉しくて仕方ない、とでもいうように弾けるような笑顔で笑ったんだ。