先輩は、打って変わって幸せそうに笑った。
「『超格好良い新入生がいる』。
そんな噂が流れてきたの。
それで、友達――と言っても、その子達が私のことを友達だと思ってないのは分かってたから、単なる知り合いかもしれないけど――・・・、
まぁ、その子達と噂の新入生君のクラスに行ってみたんだ」
先輩はそこで一瞬、言葉を止めた。
そして、俺の方を向いて笑った。
「大島君の時にも、先輩達、見に来たんじゃない?
そんなルックスで、大島君が噂にならないわけないしね」
「あー・・・、そんなこともあったような」
わざと曖昧に言葉を濁す。
いや、正直言って、覚えている。
当時3年生の女子の先輩たちが、結構クラスに来てた。
まさか、こんな風に、ある意味伝統的に引き継がれているなんて知らなかったけど。
先輩は悪戯っぽく目を細めた。
あ、バレてる。
俺がわざと誤魔化したこと、先輩は気付いてる。
そんな簡単に見破られたことが、ちょっとだけ、悔しいと思った。
「まぁ・・・、それでね、とにかく、私たちは1年生のクラスに行ってみたの。
・・・そしたらね、ビックリして声が出なくなった。
名前すら知らなかった。
だけどね、ちょっと茶色がかった髪も、
切れ長の瞳も、
何て言ったらいいのか分かんないけど・・・、一目見た瞬間、心が掴まれる様な気がして。
だけど、『格好いい』なんて言えなかった。
だって、とてもじゃないけど、そんな一言で表せないから」
先輩は、また、目を細めた。
でも、さっきまでの笑みとは違っていた。
少しだけ、本当に少しだけ。
先輩の笑みには、切なさが滲んでいた――・・・。

